シェフとしてキッチンで料理をつくる日々の中で
食の循環の大切さに気づき、農業を始めた料理人・五十嵐創さん。
幼い頃から、父の働く中華料理店で鍋を振るい、常に料理と共に生きてきた五十嵐さんは、あるとき、日々飲食店から出る食品廃棄物に疑問を抱きました。「この生ゴミはどこへ行くのか」と。そう考えた末に五十嵐さんは、神奈川県・藤野へ移住。農業を始め、自ら作物を育てながら、シェフとして料理を作る活動を始めました。
今回、五十嵐さんは、ヒョンデと行うツアーのために専用の畑を耕し、IONIQ 5に積んで持ち出せるモバイルキッチンを開発。「食の循環を体験する」をコンセプトに、作物の収穫から調理、そして料理をみんなで味わうフードツアーを行います。
私たちの体を作る「食」の循環について、五十嵐さんと共に考えてみましょう。
9歳の頃から父親が経営する中華料理屋の厨房に立っていた五十嵐さん。
「学校も放課後はすぐ帰りましたし、体調が悪くても働きました。大変でしたけど、料理は好きだったので、そこまで嫌だとも思わなかったですね」
やがて大人になり、後継者となった五十嵐さんは、あるとき厨房から出る大量の生ゴミに疑問を持ちます。
「飲食店が出す大量の産業廃棄物は、どこに行くんだろうと気になりだして。結局廃棄物は自然を破壊していくわけです。このままでは料理を続けていくのは難しいなと思ったときに出会ったのが、“ハザカプラント”でした」
ハザカプラントは、県南衛生工業の代表取締役である葉坂勝さんが考案した循環システムです。バクテリア(微生物)によって、たった25日間で廃棄物を完熟堆肥に変えます。
「葉坂さんには『料理の3大原則は風味・風土・風景』であること、そして野菜を育てるのは、人ではなく、土だということを教えられました。『命ある土』を作るために必要な堆肥は生ゴミで作る。その堆肥で生きる土で、野菜が育つ。それこそが食の循環だとようやく気づいたんです。『風味・風土・風景』の原点である土を作り、野菜を育て、収穫して、料理をする。そしてまた土を作る。そうやって食が循環していく。だから僕は『土とシェフ』という名で活動を始めたんです」
五十嵐さんは神奈川県の藤野に移住し就農しました。日本でも数少ない有機農家×料理人として歩み始めます。
サステナブルな取り組みで知られる藤野ですが、五十嵐さんがこの町に移住を決めた最大の理由は、藤野特有のコミュニティのあり方に惹かれたからだといいます。
「地域通貨が浸透していたり、市民発電所といわれるくらい電気の自給が進んでいたり、民間の力でいろんな社会実験が行われているのが藤野なんです。また、地元の有機野菜と加工品が並ぶ『ビオ市』や、『藤野まるまるマルシェ』などの取り組みがあって、農を考えるにはいい土地でした」
五十嵐さんは藤野町の農家の協力やアドバイスを受けながら、自ら畑を耕し、作物を育てはじめました。
実際に農業を始めて五十嵐さんは、専業料理人だった頃に持っていた「オーガニック」への先入観が覆されたといいます。
「オーガニック野菜って虫食いもあるし、雑味もあって、そのくせ高級だと、ある種の偏見を持っていたんです。でも実際にいろんな農家を回って、真剣に取り組んでる人たちの作る有機野菜は、そういうデメリットがないうえ、価値観を180度変えるくらいおいしかった。結局、オーガニック栽培でうまくいってない野菜は、土作りができてないんだと、後にわかりましたね。葉坂さんの言うとおり、土がいちばん重要なんです」
化学肥料を使わず、枯れ草を鋤きこむやり方で、土作りを行う五十嵐さん。失敗も多かったといいますが、農家の方々のマインドに助けられたといいます。
「農家の方々に聞いても、農は8割方うまくいかないって言うんです。『どうやって気持ちを保つんですか?』って聞いたら『しょうがないよ、自然のことだから』と答える。彼らはうまく栽培できたらラッキーって感覚なんですよね。本当においしい野菜を作る人たちは、『俺がこの野菜を育てた』なんて誇らない。『今年うまくできましたね』とか『今年は気候的が良かったから」とか自然のおかげだって言うんですよね」
土と共に生きる「農」に携わり、食で農をデザインする五十嵐さんは今回、ヒョンデとのコラボレーションで、「食の循環を体験する」フードツアーを行います。IONIQ 5に乗って、藤野を訪れたツアー参加者は、まず畑へ向かい、野菜を収穫し、そのとれたての野菜をIONIQ 5 に積んだモバイルキッチンで、V2Lを活用した電気調理して、みんなで料理を味わいます。その体験を通して、食の循環を体感してもらうツアーです。。
ツアーではまず、畑で取れたハーブを参加者自らが選び、ブレンドティーを淹れて味わいます。そして五十嵐さん自らが耕した土で育った野菜を収穫して調理します。
「参加者の方々には、採れたての有機野菜の味わいに感動してほしいですね。僕が葉坂さんに教えられた『風味・風土・風景』という料理の3大原則を身をもって実感できると思うんです。僕らの食は循環していて、本来はひとつもゴミになんかならない。都市にいると、その循環を感じづらい人たちも、このツアーで『3つの風』を知り、食と農の循環について考えてもらえるきっかけになればいいなと思います」
※V2L について
IONIQ 5のV2L機能は室内外に、最大1.6㎾の電力を供給します。室内にもコンセントがあり、さらに外部の充電口にV2Lコネクターを連結することで、駐車中にもキャンプ場など外の様々な空間で、電力を使用することができます。
今回のツアーでは、電気調理ができるモバイルキッチンも開発しています。
「IONIQ 5からV2Lで給電して調理ができるんですよ。ジューサーを使うこともできるし、電気ポッドでお湯を沸かすこともできる。IHで加熱調理もできます。ちょっとした冷蔵庫や蒸し器だって使えます。参加者の方々には、今回のツアーで使い方を知ってもらって、実際に自分たちで全国各地に出かけて、その土地の作物を現地で味わってほしいですね」
モバイルキッチンは、自分自身で調理器具をカスタマイズすることができるように考えられています。IONIQ 5にモバイルキッチンを積んで、全国を旅することで、かけがえのない食体験もできそうです。
食の循環を考え抜き、実践する五十嵐さんは、食における豊かさは「感謝」にあると語ります。
「農家さんが『自然のおかげで作物ができた』と言うように、自然に感謝したり、食に感謝したりすること。ありがたいと思いながら作り、食べることが、豊かさだなと思います。ものが溢れてることではなく、心が満たされることが豊かなんですよね」
また、食における自由は、コンビニやレストランに並ぶ前の段階で選べることだとも言いました。
「コンビニのお弁当やレストランのメニューを見てると、なんでも選べるような気がしますよね。でも本当の自由って、商品として並ぶ前の段階にある。その料理に使われている食材が生まれる風景や、生産者さんたちのこと、そういう人たちの想いや頑張りを含めて、食事を選べるのが自由だなって思います」
モバイルキッチンを積んだIONIQ 5で、出掛けた先の土地で収穫された作物を、生産者から直接いただき、その場で食べる。そんな自由で豊かな食の体験が、「食の循環」を考える第一歩に繋がっていくのです。
料理⼈、農家。オーガニック農家レストラン「⼟とシェフ」オーナ ー。東京農業⼤学短期⼤学部卒業。「広味坊 千歳烏⼭本店」を経て、 神奈川県の藤野に移住。⾷の循環社会を⽬指してに、料理⼈と農家の 領域を⾏き来しながら活動する。
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